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2017年12月24日日曜日

【閑話休題74】還暦後のテニスと村上春樹さんの思い出

 還暦を迎えて一年がたった。
いや、これほど体力が衰えるとは思わなかった。階段を一段、いや二段くらい降りた感触で、特に筋肉の衰えが著しく、これではいかん、なんとかしなければと思い立った。
一昨年の秋から昨年の春までは、五月に刊行した『権力と孤独 演出家蜷川幸雄の時代』の書き下ろしにかかりっきりになっていた。終わって一息ついたので、遊びのスイミングでは効果がないと諦め、同じスポーツクラブのジムエリアに行き、インストラクターを頼んで、パーソナルトレーニングを始めた。
筋肉がしっかりとしたWコーチは、とても人柄がよく、いつも怪我を気づかってくれた。東日本大震災をきっかけに、五十代の半ばで中断したテニスを再開するだけの体力をつけてほしいとお願いした。
断続的ではあるが、ほぼ週一のパーソナル、週一回の自主練習を重ねて、この十一月には近所にあるテニススクールで、無事、復帰を果たした。久しぶりにするテニスは、息が切れる。カゴ一パイの球出しや振り回しにはあはあ、ぜいぜい。情けなくはあるが、何より愉しい。まだ、二ヶ月に過ぎないが、筋力もアップし、筋力量も増した実感がある。 
私の場合、こうした生活は、書き下ろしとは両立しない。毎日ランニングを何十年も続けている村上春樹さんはすごいなと思う。千駄ヶ谷のピーターキャットというカフェバーを経営されていたときには、もうランニングを始めていらしたのだろうか。営業時間が終わると麦酒の小瓶を開けて、実においしそうに飲まれたのを覚えている。
そういえば、外苑にあった写真家の稲越功一さんの事務所で偶然、村上さんと会ったことがある。ランニングの途中で立ち寄ったとのことで、なるほど、ランニングも走り続けるのがすべてではない。途中休憩もありなのだなと思った。稲越さんももう、この世にはいない。稲越さん、村上さんとどんな話をしたかはすっかり忘れてしまった。稲越さん、村上さん、安西水丸さんの三人がともに本を出版された時期だったと思う。ふたりがざっくばらんな会話をされいたことだけが印象に残っている。
還暦を過ぎた今となっては、スポーツも勝負ではなく、娯楽になる。きつくなったら休んでもいいのだな。
もっとも、調子に乗って過日、ワンデイキャンプも申し込んだ。朝の十時から二時間半のレッスンである。キャンプの初めに「体をあっためましょう」と広い体育館を三周、ジョギングしたのには参った。喉がいがらっぽいをの押して参加したら、案の定、次の日、風邪の症状が出た。それでも、反省するどころか、ご満悦なのだから、手に負えない。風邪を引きずったまま、この慌ただしかった一年が暮れていく。