自宅の書棚には、基本的に演劇書を置く。外の本は研究室に送る。どうしても手放せないものか文庫本だけ置く。との原則(あくまで原則ではあるが)を守ってきたために、演劇書以外の書籍というとさしたる本が見当たらない。
そこへふっと出現したのが、新潮社版のプルースト「失われた時を求めて」。大学生当時とても高額で揃いを買えなかった。大学の先輩の三宅さんが、揃いを所有していたために、一冊づつ借りて読んだ。読み終わったときに、哲学科の大学院にいた三宅さんは、気前よく「あげるよ」といった。驚愕の瞬間だった。
あれから、40年がすぎて、今も、スワン家のほうへがかたわらにある。外の巻は実家に。どうしてもこの一冊は手放せない。
通して読み返すことはないが、気に入った頁をめくったりはする。