長谷部浩ホームページ

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2015年3月21日土曜日

【閑話休題6】十代の歌舞伎俳優とは。

20日初日のKAAT公演『葛城山蜘蛛絲譚』を観た。おもしろかった。
勘十郎の作・演出・振付。勘十郎、菊之丞、鷹之資、玉太郎と、花柳時寿京、花柳凜の出演。
「子役から大人の俳優への移行期」にある俳優をクローズアップした新作だが、今月三月南座、正月は浅草公会堂に出演していた花形たちが、十年から十五年前には、こんな風に芸と格闘していたと思うと興味深い。
これまで、「学業に専念する」とのお題目で、このむずかしい年代の役者がどのように芸に取り組んでいるかがあまり明らかになっていなかった。少なくとも二人は、次代を背負うべく自らの人生を見詰めているのがよくわかった。鷹之資の金時におおらかな味があり、技巧の洗練と役を生きることとの難しさと向かい会っているのがわかる。玉太郎の山神は巧まざる品位があり、こせこせしない芸風がそなわっている。
作品の全体としては、スペクタクルとしてよく演出されていて、新作の弊がない。『紅葉狩』『山姥』『戻橋』などの古典を巧みに取り入れている。
いわずとしれたことだが、勘十郎は歌舞伎の振付師であり、また、勘十郎と菊之丞は日舞の家元でもあるわけだが、歌舞伎と日舞の関係の複雑さがよくわかる。
勘十郎振付の才気がすぐれている。若手女流をツレての大胆な振付。奥のキャットウォークを使っての幕切れなどおもしろくみた。
また、菊之丞の台詞回しの見事さは玄人はだしで驚くほどであった。役者っぷりのよさを堪能した。
日舞の世界から若手女流の花柳時寿京と花柳凜が加わり、「新作歌舞伎舞踊」の枠組のなかで健闘している。
技術の正確さをめざしているのは日舞ならではだが、そこにとどまらない。時寿京には、身体に切れ味があり、性根へと向かっている。力が抜けて、扇を従えればもっとよい。
凜はあたりを払う品のよさを冒頭からみせる。ふたりにとって、よい修業の機会を与えられた幸運を思う。
歌舞伎役者の身体が年代を追って、どう成長していくか。歌舞伎役者と舞踊家の身体にはどのような差異があるか。興味は尽きない。
そのあたりに関心のある方には、ぜひおすすめしたい。
http://www.kaat.jp/d/wakatebuyou