長谷部浩ホームページ

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2017年10月13日金曜日

【閑話休題68】永井愛作・演出の『ザ・空気』が思い出される。衆議院選挙について。

 連日、大きな組織による不正が報じられている。商工中金、神戸製鋼、日産自動車、東芝と、まるで負の連鎖が続いているかのようだ。
それにしても、日本社会からモラリティが失われたのは、いったいいつ頃からだろう。近年明らかになった事実は、どこまでさかのぼれるのだろうか。モラルハザードが崩壊したとすれば、それは経済界だけではない。安倍晋三首相が、森友・加計問題への説明・弁明を怠ったまま、衆院議員解散を強行した時点で、政治に関するモラルもまた、地に落ちたと考える。安保関連法案をとどめることができなかった私たち市民がいかに現実を直視するかが、今回の投票で問われている。
欺瞞や不正など人類の誕生からあった。組織はそのような腐敗を必然的に生むとの反論もあるだろう。それだけに人類は、種の生存と地球を守るために、法による統治を求めてきた。立憲主義はその根本にあり、多くの戦争を経験してきたあげく、ようやく手にした現行の憲法を改悪しようとする勢力には、欺瞞や不正をものともしない邪心がある。
もちろん、正義と真実ばかりを尊いとするのではない。むしろ、希望を強調して国民を思っているかのように主張する勢力にも、また大きな邪心が潜んでいるように思えてならない。
毎日の生活に追われるがゆえに、なにか大切なものが犠牲になってはいないか。テレビの報道の現場を鋭くえぐった永井愛作・演出の『ザ・空気』が思い出される。メディアの内部にも、忖度と圧力と排除が蔓延している現実を先取りにして舞台にしていた。ジャーナリズムからもモラルが失われて、事実は巧みに隠蔽される。初演は、今年の一月だが、この鋭角的な告発を受け止めることができず、手をこまねいていたがゆえに、この十月の陰鬱きわまりない現実がある。そう自問自答せずにはいられない。