2016年8月7日日曜日

【閑話休題43】『船弁慶』のアクシデントを右近の義経は見ていた

尾上右近さんの第二回「研の會」『船弁慶』で、知盛の霊が花道からの出からすぐに薙刀の先が折れるアクシデントがあった。
後見がしっかりしていたこともあって、尾上右近さんはなんなく切り抜けた。
こうした落ち着きがあったのは、なぜか。
もう、十年以上前になるけれども、平成十七年の八月、広島の厳島神社で尾上菊之助さんが『船弁慶』の静御前と知盛の霊を勤めたことがあった。義経は右近さん。弁慶は團蔵さんだった。
私は一日目だったのでこの回を観ていないが、二日目に知盛の薙刀の先が飛んでしまう事故があったと聞いた。
当時高校生だった右近さんは、間近でこのアクシデントを体験している。知盛役にとってこの事故は決定的なものになる危険がある。
そのため、今回も万一を考え、決して用心を怠らなかったのではないか。
そんなことを思いながら、充実した舞台を味わっていた。