2016年1月23日土曜日

【閑話休題29】『天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎』予約が始まりました

「平成二十四年十二月に勘三郎、平成二十七年二月に三津五郎が急逝した。私はこれまでともに走ってきた同世代のふたりを失ってしまった。なんの根拠もないのだが、いつまでも、ふたりとともに走り抜けると思っていただけに、こんな日が現実になるとは思いもしなかった。まるで、はしごをはずされたような心地さえした。勘三郎のときは、呆然として仕事が手に着かなかった。三津五郎のときは、逆にしっかりなければと自分を叱咤した」(あとがきより)
六月に年表作成をはじめ、八月に執筆を開始し、九月末に脱稿。ようやく来週に校了になります。
編集者に、私はこの本を書くために生まれてきた。といわれ少し困惑していますが、
『天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎』を書き終えて、なにか運命といいますか、
見えない力に操られているような気持になりました。

勘三郎、三津五郎と同世代に生まれたのは私の誇りです。
ふたりの急逝がなければ、この本を書くことはなかったでしょう。

ふたりが昭和の終わりから平成にかけて駆け抜けた軌跡は、
ことば遊びではなく、まさしく「奇跡」だったように思えています。

ふたりの輝かしい日々、舞台の記憶を本書でたどっていただければうれしい。
ふたりの舞台に間に合わなかった歌舞伎ファンには、こんな天才と名人がいたことを
ぜひ、知っていただきたいと思うのです。